無印良品のアートディレクションが有名な原 研哉氏の明快なデザイン論。
自分はデザイナーではないが、割と近いところで仕事をしている事もあって、
常日頃の興味の対象になっています。
でも、ただ単にデザインという言葉を思い浮かべた時には、
そこにはただ漠然としたイメージしか浮かばず、
また、説明するなら、とても多くの言葉をごちゃごちゃと並べて、
最終的に何であるのかを明確にすることが出来ませんでした。
それだけ抽象的で、またとても扱いの広い事柄だと思いますが、
この本では「デザインとは何か?」ということをバッサリと、
しかも解りやすく具体的に述べられています。
たとえば、「アート」と「デザイン」との違いは?という
一般的な問いに対して、こう述べられています。
アートは個人が社会に向き合う個人的な意思表明であって、その発生の根源はとても個的なものだ。
一方、デザインは基本的には個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある。
漠然と思っていた事が、こう明確に定義されると、
今までも目の前の靄がパッと消えてなくなった思いがして、
なんだかとても心地よい。
デザイナーの仕事には、実際にデザインを実践するという側面だけではなくデザインというフィールドを社会の適正な場所に再配置していくという側面がある。
デザインは技能ではなく物事の本質を掴む感性と洞察力である。だからデザイナーの意識は社会に対していつも敏感に覚醒している必要がある。
個人的に私が会ったことのあるデザイナーで
このようなことを考えている人は一人しか知らない。
しかし、残念ながらそのようなポリシーを持つデザイナーが
この日本でサヴァイブできるほど現実社会が成熟しておらず、
相変わらず表層の見た目重視と短絡的な商業的価値観により
仕事が流れていく様子をたくさん見てきた。
しかし、大御所・原氏をもってしてもうまく行かなかった仕事がある。
それは
愛知万博で、「挫折」という言葉を使って述べられている。
仮にこの本にあるようなコンセプトで万博が開催されていたのなら、
この時代に「万博を開催する意義」があったかもしれない。
でも、うまく行かなかったからといって、
それを単に批判したりそれで終わりにするのではなく、
この失敗をポジティブに考えてデザインを機能させて行きたい言うところに、
氏の懐の深さが垣間見れる。(もう、尊敬します。)
周囲からうっとおしがられるデザイナー必見(笑)。
また、Webデザイナーが仕上げてきた画面に、
毎度苦労させられるシステムエンジニア・プログラマーなどにもお勧めです。
この人たち(私も含めて)は、情報という目に見えないものを
こねくり回す仕事をしています。
最終的にその情報をビジュアルに見せる役目を担うのがデザイナーの仕事で、
その力なしには仕事が完遂しないからです。
マーケットを動かすデザイン
posted by TOOLKIT at 23:55|
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